みけうどん

猫とうどんが好き。

早春(小津安二郎/1956年)

『お茶漬けの味』に続いて『早春』を見る。今回は淡島千景が主演。わたし、この人の顔好きだな〜。ちょっと眠そうな目元が素敵。美人さんだわあ。

早春/小津安二郎

大筋としては、浮気してしまった夫・正二(池部良)とその妻・昌子(淡島千景)、浮気相手の通称「金魚」(岸惠子)の三角関係の話なんだと思うけど、なんというか全編を通じて死の影がずっとあるというか、ちょっと虚無的な空気が全体に漂う不思議な雰囲気の映画。正二と昌子も子を亡くしているという設定だし、会社の同僚は肺を病んで亡くなってしまうし、酔っ払ってクダを巻く戦友達がいる…ということは正二は戦争帰りで、深読みすると身寄りがないのかなって感じだし(昌子の母親や弟は出てくるが、正二の家族は一切出てこない。名前からして次男だけど兄も両親の存在も臭わせない)。

そんなこんなで、正二や昌子をはじめ、出てくる人たちはみんな滅多なことじゃ笑わない。時々あきらめたような顔で口角を上げるくらいで、屈託なく笑ったり怒ったり感情をむき出しにするのは金魚くらいかも。

金魚はなんせ表情がコロコロ変わって忙しい。最後に正二を思いっきり何度もひっぱたき、その日(?)の夜の同僚達との壮行会ではニッコリ笑って正二に握手を求めるところは素敵だった。いい子だな金魚〜。そして美人だわあ。

基本的に男たち(同僚や元戦友たち)が群れてグダグダしてるのに対し、女たちは割と群れずにそれぞれピンシャンやっていて興味深い。ま、女たちもそれぞれ愚痴ったりしてるんですけどね、もちろん。

戦争でいろんなものが失われ、戦争が終わっても病や何かで失われ、サラリーマンはサラリーマンで時間や自由を奪われて、脱サラしたらしたで不安定で…という、羅列するとなんだか救いのないような世界のなんだけど、女たちは男たちを尻に敷いたりあきらめたり叱り飛ばしたりしながら、時には笑って手を差し伸べて、なんとか生きていくのだな…。

 

そういえば、完全に余談というか蛇足ですが、正二の転勤先が「三石(みついし)」と言われて、そこ知ってる!とテンションが上がってしまった。

三石は、18きっぷで大阪から高松に移動する際に何回か車窓から見ただけなんだけど、いつか降りてみたい駅のひとつ。明治時代から続く煉瓦工場が今でも操業していて(正二の会社が「東亜耐火煉瓦」なので納得)、車窓から見てるとラピュタの鉱山街みたいな雰囲気でなかなかに趣がある。

『早春』みて、ますます行ってみたくなっちゃった〜。

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