みけうどん

猫とうどんが好き。

お茶漬けの味(小津安二郎/1952年)

撮りためていた小津を見る。まずは『お茶漬けの味』。感想としては…佐分利信がかわいい!以上!!

……というわけにもいかんわな。

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小津の映画は大人の映画(というか大人として成熟することを要請する映画)だと、内田樹さんがたしか仰っていたと思うが、この映画、若い頃に見てたらずいぶん違う印象を受けたんじゃないかなと思う。自分がせっちゃん(津島恵子)くらいの歳で、周囲の大人から見合いを強制されるような立場だったら、せっちゃんと同じく見合いなんて御免と逃げ出すに決まってるし、ついでに「小津の映画ってなんか嫌ね」みたいな感じで小津作品に近づかなくなっていた……とまでは行かないにせよ、ちょっと敬遠はするようになったかもしれない。小津映画ってなんかよさげなんだけど、でもちょっとね、みたいな。

まあ、なにはともあれ、結婚もして40過ぎた今となってはお見合いもありかもね、とちょっと思うし、せっちゃんのことを子供だなあと感じる。せっちゃん的な目線も分かるし、佐竹夫妻(佐分利信木暮実千代)たちのようにいい歳なんだから結婚しなさいよ、という意見も、まあ分かる(というか昔ほど嫌じゃない)。とはいえ、いちばん共感するのは、お見合いから逃げてきたせっちゃんとパチンコしたりご飯を食べたりしつつ、その件を叱ったりもする佐竹のあやふやな態度なんだけれども。

そして、他人の家のような自宅の台所で、女中を起こさないようにご飯を探し、ぬか漬けを切る妻の着物の袖を持つ夫の「気安い感じ」も悪くないなあと思う。

結局せっちゃんはまたお見合いに引っ張り出されて誰かと渋々結婚させられるのか、意外とのんちゃんとうまくいっちゃったりするのか、その辺は明示されないまま話は終わっちゃうけど、お見合いだろうが恋愛結婚だろうが、佐竹夫妻みたいにうまくいかない時期もあったり、ふとしたきっかけでうまくいく時期もあったりで、まあ、なんだかんだで人生は続くんだな、というしみじみした気持ちにさせられる。

佐竹自身の態度もそうなんだけど、言葉や態度ではっきり白黒つけない、物事を保留する余裕というか諦観というか、いつも困ったような笑い方をする大人たちが印象的だった。

あと、これはもう完全に余談なんだけども、久々に小津映画を見て、現代との言葉遣いの違いがすごいなーと感心してしまった。目上の人に話かけられても、男女の差なく返事がほぼ「はあ」とか「ああ」とか「へえ」だし、会社で部長が社長の部屋を出るときの挨拶が「ごめんなさい」だし。言葉遣いってずいぶん変わってるんだなー。

今なら「失礼な言葉遣い」だとか言われそうだけど(なんたって目上の人に「了解」とメールを返すのは失礼だ、なんて記事が出回る世の中だもんね)、数十年でいろいろ変わっちゃうんだろうなあ。いわゆる常識なんて存外はかないものなのかもなあと、こちらでもしみじみ。

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